糖尿病講座

■アルマ動物病院 糖尿病・内分泌病センター

犬、猫の糖尿病発症率はとても低く、各動物病院で1〜2頭程度というわずかなものです。
にもかかわらず獣医師にとっては診断・治療に多大な時間を必要とし、頭を悩ませる疾患の1つでもあります。
一方で糖尿病となってしまった症例の飼い主は、大きな不安の中で日々治療を行わなければなりません。
このため些細なことで不満を抱くようになり、折角培ったかかりつけ医への信頼を失ってしまうケースが多いようです。
当院では糖尿病をはじめとする内分泌病を専門に診察・治療を行っております。
特に糖尿病においては詳細な診断から治療初期の食事療法、インスリンの選択や血糖曲線の作成、そして治療効果の判定に及ぶ全てのステージを、かかりつけの先生からご紹介を頂きまして行います。
また、診断結果や治療方法をお知らせして、かかりつけ病院にて血糖コントロールができるようにすることも可能です。
以下の診察依頼書に必要事項をご記入頂きましてファックス頂けますようお願い申し上げます。


診察依頼書 診察依頼書
FAX:03-5758-6670



糖尿病カウンセリングシート 糖尿病カウンセリングシート
FAX:03-5758-6670




■長谷川院長による糖尿病講座

大学時代から糖尿病を研究・診察し続け、日本糖尿病学会に所属しているアルマ動物病院の長谷川院長による糖尿病講座です。


アルマ動物病院 糖尿病日記 当院オリジナル糖尿病記録シートです。
ダウンロードしてご利用下さい。



糖尿病講座1:糖尿病でお悩みではありませんか?

犬の飲水量は1日に体重1kgあたり50ml以下と言われています。
お水を大量に飲んだり、おしっこをたくさんしていませんか?
もしそうなら。。。。もしかしたら病気かもしれません。
そんな病気の中に糖尿病があります。

“糖尿病の治療は低血糖発作を起こさないようにあまり血糖値を下げてはいけない” “糖尿病は合併症が出やすいからしょうがない” などという説明を受けながらインスリンを毎日注射している飼い主様が多いようです。
糖尿病の合併症は適切な食事療法と最適なインスリンを適切な量摂取すれば予防することが出来ます。
毎日の食事が味気ない、注射がうまくできない、毎日注射をしているのに、体重減少、尿糖が出る、目が白くなってきた(白内障)などなど。。。

お悩みがありましたら是非一度ご来院ください。

アルマ動物病院は豊富な経験を基に最適な食事療法とインスリン療法で正常血糖値を再現し、正常な子と同じような生活の実現と、合併症の予防を目指します。


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糖尿病講座2:経口血糖降下剤ってインシュリン注射と違うの?

経口血糖降下剤は文字通り“飲んで血糖を下げる”クスリです。
日本人は糖尿病人種ですからこの種のクスリはいろいろあります。
この中で犬猫に使用される報告があるのはスルフォニルウレア(SU)製剤と言われる種類の薬剤です。 これは膵臓のランゲルハンス島からのインスリン分泌を促進させて血糖値を下げる作用があります。
そんなクスリならわざわざ痛い思いをさせて毎日インスリン注射をする必要ないのでは?! まさに“夢の薬!”ということなのでしょうか?

実はこの薬、インスリンの“分泌を促進だけ”をして“合成は促進しない”のです。 ですからランゲルハンス島の中に作られたインスリンがあるうちはたくさん分泌されますが、なくなってしまったらもう分泌されず効果がなくなってしまうのです。
しかもこの状態を続けるとランゲルハンス島自体が壊れてしまい、二度とインスリンを分泌できなくなってしまいます。 ですからインスリン注射をすることはランゲルハンス島を守ることにもなり、人でも早めのインスリン注射を推奨しています。
このことは犬猫の糖尿病でも同じで、特に猫では一時的な糖尿病になっていることもあるので、インスリン注射をすることにより糖尿病状態を離脱できることがあります。

もしお悩みのことがありましたらご相談ください。


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糖尿病講座3:何で血糖値が高いといけないのでしょうか?

そもそも。。。。何で血糖値が高いといけないのでしょうか?

血糖値が高いということは体がぶどう糖を消費できなくなっているということです。 ブドウ糖の主な消費・貯蔵場所は脳、筋肉、脂肪、肝臓です。
このうち脳以外の臓器では、ブドウ糖を取り込むためにインスリンが必要となります。 このため何らかの原因でインスリンの働きが悪くなるとこれらの臓器はブドウ糖を取り込むことができなくなり、高血糖状態となるのです。

では、元へ戻って高血糖はなぜいけないのでしょうか?

答えは血糖の高い状態が続くと合併症を引き起こすからです。
高血糖が長く続くとおもに血管と神経に障害が出てきます。 そして合併症が起こってくる臓器はいずれもインスリンがなくてもブドウ糖がどんどん入ってきてしまう臓器ということになります。
具体的には、腎臓、眼(網膜)、神経で人ではこの臓器に起こる合併症を糖尿病性三大合併症といっています。
犬では腎症と網膜症そして白内障が見られ、猫では神経障害による後肢の起立困難が見られます。

これらの合併症を予防するために糖尿病では食事療法を行い、早期からインスリンの導入をお勧めしています。


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糖尿病講座4:糖尿病だから目が白くなるの?

“糖尿病だと白内障はしょうがないですね。”といわれているワンちゃんがいるそうです。白内障は糖尿病に付きものの症状なのでしょうか?

答えは“ノー!”

つまり白内障は糖尿病の合併症です。
ということは予防したり、悪化を防ぐことが出来るのです。
白内障とは目の奥にある水晶体(レンズ)が白くなることです。
ではなぜ糖尿病になると白内障になってしまうのでしょうか。
前回のお話したように筋肉、脂肪、肝臓などはグルコースを細胞内に取り込むのにインスリンを必要とします。
これに対して水晶体はグルコースを取り込むのにインスリンを必要としない組織の1つです。 このような組織では高い血糖値が続くと組織内でのグルコースの濃度も上昇してしまいます。
この状態が続くとグルコースをエネルギーに代謝するのが間に合わず、細胞内にはソルビトールとフルクトースという物質がたまるようになります。
ソルビトールは親水性なので細胞内にどんどん水分を蓄え、浮腫(むくみ)を引き起こします。一方フルクトースはタンパクの糖化を促進し、細胞を傷害することになります。
この結果水晶体の構造は破綻を来たして白内障を発症することになります。
犬の糖尿病では糖尿病発症からわずか1~2ヶ月で白内障を発症してしまうことがあります。

ですから糖尿病を的確に治療して血糖値を正常化(具体的には150mg/dl以下)することにより、合併症としての白内障は予防・進行の抑制をすることができます。
実際に当院に通院している糖尿病の子のほとんどは発症から数年経っても白内障を合併していません。

眼球


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糖尿病講座5:インスリンは同じところに注射してはいけません。

今回はインスリン製剤の注射方法です。
インスリン製剤の種類とその歴史はまたお話しするとして、いずれのインスリン製剤もその注射方法に決まりとコツがあります。
私達獣医師が使用するインスリン製剤には大きく分けて静脈注射用と皮下注射用があります。
静脈注射用のインスリン製剤は短時間型のインスリンとしてレギュラーインスリン(ノボリンRなど)があり、主にケトアシドーシスなどで入院したときの治療薬として使用します。
これに対して皮下注射用のインスリン製剤は血糖コントロールのために日頃飼い主様が注射する治療薬です。現在入手可能な皮下注射用のインスリン製剤はほとんどすべてがヒト用で、当院ではイヌ用としてノボリンN、ノボリン30R、ノボラピッド30ミックス、ネコ用としてランタスを用意しています。これらは最大効果時間、効果持続時間が異なり、症例や病期よって最適なインスリンを使用します。
しかし、いずれの皮下注射用インスリン製剤でも注射をする際に守らなければならないことがあります。

1.インスリン製剤は希釈してはいけない。
希釈することによってpHが変化して効果が減少したり短縮することがあります。
2.同じところに注射してはいけません。
インスリン製剤は同じところに注射してしまうと皮膚が硬くなってしまい、効果が減少することがあります。このため、少しずつ場所を変えて注射しなければなりません。
3.インスリン製剤はインスリン用の注射器を必ず使用し、注射器内に吸引するには必ず気泡が入らないよう正確に必要量を吸引するようにする。
インスリン製剤はわずかな量の違いで効果が全く変わってしまいます。このため、必ず正確な量を注射するようにします。

以上のことを注意して確実にインスリン製剤が効くように注射を行ってください。
糖尿病のワンちゃん猫ちゃんを日々治療するのは飼い主様です。
我々獣医師はそれをアシストする側となります。
かわいい“うちの子”に注射なんて・・・・と不安と恐怖を感じながら毎日注射されている飼い主様とても多いようです
当院ではインジェクターを使用したり、注射の仕方を院内で練習して頂くなど、うまく治療できるように応援しています。

インスリンのインジェクター
インスリンのインジェクター


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糖尿病講座6:日本で一番古い糖尿病患者さんは光源氏???

インスリンとは胃と十二指腸にくっついて肝臓と隣り合わせに位置している膵臓のランゲルハンス島から分泌される血糖値を下げるホルモンです。
実は体の中で血糖値を上げるホルモンはいくつかあるのですが、下げるホルモンはインスリンだけなのです。だからこのインスリンというホルモンの不具合が起きるとほかに血糖値を下げる手段がないために、糖尿病という病気が発症してしますのです。 さてこの糖尿病という病気は3500年前の世界最古の古代エジプト医学書、エーベルスパピルスに「多量 の尿を出す病気」と記述されています。
一方日本では、1027年の平安時代、源氏物語の主人公光源氏のモデルとなったといわれる藤原道長が糖尿病で亡くなったことが知られています。藤原実資の日記「小右記」には、「のどが乾いて、水を多量 に飲む」、「体が痩せて、体力がなくなった」、「目が見えなくなった」という道長の病状が書かれています。道長の一族は糖尿病家系だったようで、これにほとんど動くことはなく、贅沢な食事だった貴族の生活はまさに糖尿病発症にもってこいだったようです。
下の切手は1997年11月に神戸で開催された糖尿病国際学会記念切手で、日本糖尿病患者第1号の藤原道長が描かれています。
ちなみに6角形の図形は結晶化されたインスリンを表しています。

1997年11月に神戸で開催された糖尿病国際学会記念切手
1997年11月に神戸で開催された糖尿病国際学会記念切手


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糖尿病講座7:猫の糖尿病は膵炎から

糖尿病はインスリンが欠乏もしくは効かなくなることで起きる病気です。
このインスリンは膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞から分泌されます。ですから膵臓自体に何らかのダメージが加わった場合糖尿病になってしまう可能性があり、その主な原因の一つに膵炎があります。
この膵炎を発症する原因にはいくつかありますが、多くの場合十二指腸の炎症から併発します。
十二指腸とは胃の出口(幽門)から小腸につながるヒトでは25センチ位の腸を指し(十二本指を横に並べた長さと言われるが実際はもっと長い。実は誤訳らしい) 、ここに膵臓からの消化酵素が分泌される主膵管と副膵管、そして肝臓の胆嚢から胆汁を分泌する総胆管が主膵管と同じ位置に開口しています。
ですから十二指腸が炎症を起こしますと、膵管を通して炎症が膵臓に波及して膵炎を併発することがあります。
この十二指腸炎→膵炎→糖尿病という病態を起こしやすいのは犬よりも猫がとても多く、糖尿病と診断した猫の半分以上は膵炎からの併発症のようです。(これは、猫の膵管が犬やヒトと違い一本(主膵管)しかないという構造上の理由も考えられます。)
犬の糖尿病と違い猫の糖尿病は病態が複雑で、治療も難しいのですが、その原因の一つが“膵炎の存在”にあります。
猫の膵炎は食欲不振だけで、ヒトや犬でみられる嘔吐、下痢、腹痛が見られないことがよくあります。また、血液検査でも膵炎を診断することは難しく、未だに確定診断はおなかを開けて直接膵臓を調べるしかないといわれています。
ですから糖尿病と診断し、少しでも膵炎を疑うような症状があれば糖尿病の治療と並行して膵炎の治療を開始し、その反応を見ながら診断(治療的診断)をするようにしています。
そしてこのタイプの糖尿病は膵炎が直ることによって徐々に血糖値が正常化することが多く、インスリン注射を行っていてもいずれ離脱することが出来ます。しかし、今まで経験した猫の膵炎は必ず再発していますので、直っても継続した治療が必要となります。


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糖尿病講座8:インスリン製剤にはいろいろな種類があります。(その1)

インスリン製剤にはいろいろな種類があります。
犬や猫の糖尿病はその治療にインスリン製剤を使用しますが、そのほとんどすべてがヒト用の製剤を使用しています。
ヒト用のインスリン製剤は長年の研究によりその歴史は大きく3つの世代に分かれています。第1世代は豚や牛から抽出したインスリン製剤。つい20年位前までは主流となっていました。ただこれはヒトにとって異種のインスリンになるため作用が不安定になったり、低下したりと不具合が見られました。このためヒトのインスリンを多量に作れるようにと当時の最先端技術であったバイオテクノロジーを駆使して微生物にインスリンを作らせることに成功しました。これが第2世代の合成ヒトインスリン製剤です。これによりインスリンの作用は安定しました。
しかし血糖コントロールにおけるインスリン製剤への飽くなき欲求はさらに続きます。それは強化インスリン療法(また別の時にお話しします)を完璧にすることを目標としたものです。そのためには2種類のインスリン製剤が必要となります。1つは注射してすぐにピークを示すインスリン。もう1つはピークがなく長時間一定した効果を示すインスリン。でした。そして研究の結果とうとうインスリンの構造(アミノ酸配列)を一部組み替えてしまいました。これが第3世代のインスリンアナログです。
現在は第2世代と第3世代のインスリン製剤が使われています。
当院ではイヌ用のインスリン製剤として4種類、ネコ用としては2種類を用意して治療に当たっています。
犬や猫でこれらのインスリンを使用する場合、やはり異種のインスリンですので、効果時間がヒトよりも一般的に短い傾向にあります。また長年使用すると効果が低下してくると言われていますが、今まで長期間インスリン治療をしてきた症例を診ていますが、そのような症例はありません。
実際のインスリン製剤の説明は次回お話しします。

当院で使用しているインスリン製剤

インスリン製剤 速効型 ノボリンR 中間型 ノボリンN 持効型 ランタス 混合型 ノボリン30R ペンフィル30R ノボラピッド30ミックス


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糖尿病講座9:インスリン製剤にはいろいろな種類があります。(その2)

前回に引き続きインスリン製剤のおはなしです。
インスリンはタンパク質よりももっと小さいペプタイドホルモンというもので51個のアミノ酸が結合して出来ています。さらにインスリンは6つの分子が結合すると結晶化して安定化する性質を持っています。
インスリンとして作用するときには再び1分子に分解して作用することになりますので、分解の速度が速いと作用が早く(速効性)、遅いとゆっくり効く(持続型)ということになります。

当院で使用しているインスリン製剤としては

ノボリンR:速効型・ヒトインスリン(レギュラーインスリン)
 生合成された(第二世代)インスリンで、静脈、筋肉、皮下どの注射法でも使用できます。効果時間は静脈注射では30〜60分ほどですが、注射経路によって異なります。主に、入院時の高血糖に対する治療、肝不全などでのGI(グルコース・インスリン)療法、糖尿病性の昏睡などで使用します。

ノボリンN:中間型・ヒトイソフェンインスリン(NPH製剤)
ノボリンR:速効型・ヒトインスリン(レギュラーインスリン)
 プロタミンというタンパク質でインスリン血漿を安定化させることによって効果時間を延長した、生合成(第二世代)インスリンです。主に皮下注射で使用し、効果時間は6〜8時間で、大型犬で使用することが多いようです。

ノボリン30R、ペンフィル30R:速効型+中間型(混合型)・ヒト二相性イソフェンインスリン
ノボリン30R、ペンフィル30R:速効型+中間型(混合型)・ヒト二相性イソフェンインスリン
 強化インスリン療法(後ほど説明します)を1回の注射で出来るように速効型:中間型を3:7の割合で混合した生合成(第2世代)インスリン製剤で、混合の割合により他に40R(4:6)、50R(5:5)があります。皮下注射で使用し、効果時間は6〜8時間ですが、速効型と中間型の2つの作用ピークがあります。小型犬で使用することが多いようです。

ノボラピッド30ミックス:超速効型+中間型(混合型)・インスリンアスパルト
ノボラピッド30ミックス:超速効型+中間型(混合型)・インスリンアスパルト
 ノボリン30Rと同様に混合型(超速効型:中間型=3:7)のインスリンですが、遺伝子組み換えで作られた(第3世代)インスリンアナログ製剤です。効果時間も同様に6〜8時間ですが、ノボリン30Rと比較して1つめのピークが早めに出てきます。小型犬で使用することが多いようです。

ランタス:持効型・インスリングラルギン
ランタス:持効型・インスリングラルギン
 遺伝子組み換え(第3世代)のインスリンアナログ製剤です。効果時間は12時間ほどで、明らかなピークのないのが特徴です。 このインスリン製剤は猫で使われることが多いのですが、これは与えた食事を一気に食べないため、徐々に消化吸収されるためにピークのないインスリンが適していることになります。もし、一気に食べてしまう猫の場合は他のインスリンを使用することもあります。


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糖尿病講座 番外編:インスリン製剤に変化が・・・・

インスリン製剤に変化が・・・・
なんと、インスリン製剤シェアNo.1のノボ社がヒトインスリン製剤のうちカートリッジ式のペンフィルシリーズの製造・販売を終了してしまったのです。
バイアルのノボリン製剤と使い捨てのペン型製剤は今のところ販売されているのですが、ヒト糖尿病のインスリン製剤は遺伝子組み換えをしたインスリンアナログ製剤が主流になっていくと言うことなのでしょう。
糖尿病を勉強するようになってから、インスリンの世代が第1世代から第2世代へ、そして第2世代から第3世代へと変わっていくのを目の当たりにするのは感慨深いものがあります。
と、グズグズとこの号を書いていたら、今しがたノボ社の担当者が来られて「ご覧のインスリン製剤が販売終了となります。」とパンフレットを差し出されました。やはり終売となるのは第2世代のヒトインスリン製剤で、これにより第2世代のラインナップは使い捨てのペン型製剤(ノボリンフレックスペン)が3種類残るだけとなりました。
早速、終売となってしまう製剤の買い占めに入ります。
これから第3世代のインスリンアナログ製剤台頭の時代となります。今のところ当院では第3世代を使ってコントロール可能な患者様ばかりですが、今後糖尿病動物(特に犬に対しての使用報告は少ない。)に対するインスリンアナログ製剤の評価が出てくることになるでしょう。

ヒトインスリン製剤一部販売終了後のラインアップ

拡大版はコチラ



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糖尿病講座 10:理想は強化インスリン療法!

第1世代から第3世代へと続いてきたインスリン製剤の進化の原動力は、「正常人の正常なインスリン分泌パターンを再現したい。」という治療理念にあります。この正常なインスリン分泌パターンの再現を目指したインスリン療法を “強化インスリン療法”と言います。そして第3世代のインスリンアナログ製剤の開発により、より理想的なインスリンの分泌パターンに近づいたと言えますが、これからも開発が行われていくことでしょう(いずれはインスリン産生細胞そのものを移植する時代となるのでは・・・)。

正常なヒトや動物におけるインスリンの分泌パターンは下の図に示したように2つの分泌相で構成されています。つまり、正常の血糖値を維持するために一日中一定の割合で少しずつ分泌される『基礎分泌(ベーサル)』と食事による血糖値の上昇分に対応する分泌の『追加分泌(ボーラス)』というものです。
それぞれの分泌相は、本来であれば膵臓のランゲルハンス島β細胞が血糖を感知しながらリアルタイムでインスリンを分泌して対応しています。しかし、糖尿病では、この2つの分泌相を2種類のインスリンを組み合わせることによって再現します。 『基本分泌(ベーサル)』用のインスリン製剤は、出来るだけ一定した効果が長時間得られるようになっています。さらにランタス(インスリングラルギン)やレベミル(デテミル)など第3世代のインスリンアナログ製剤では効果のピークも出ないように作られています。
『追加分泌(ボーラス)』用のインスリン製剤は、注射後速やかに効果を発揮し、しかも短時間で効果がなくなるようになっています。さらに食前30分前に注射する速効型ヒトインスリン製剤のノボリンRと比較して、超速効型インスリンアナログ製剤のノボラピッド(アスパルト)は食直前の注射と作用の発現が非常に早くなるように作られています。

正常な人のインスリン分泌


ノボ ノルディスク ファーマのインスリン剤ラインアップ

拡大版はコチラ


糖尿病講座 11:インスリンの選択は犬だからNPH、猫だからグラルギン!?

糖尿病講座を始めた頃と現在ではインスリンの種類がまた変わっています。
インスリン製剤の進歩は本当にめざましい物があります。
私も全てを使用してみているわけではありません。
現在当院で使用しているインスリンは5種類でこれを使い分けています。
血糖コントロールを開始する際のファーストチョイスとしては、原則として犬でNPH、猫ではグラルギンを使用するようにしています。 これでほとんどの場合コントロールが可能となるはずですので、是非これらのインスリンから初めて頂きたいと先生方にお願いしております。
しかし、中にはこれでは上手くいかない場合があり、一つの原因は食事との関連性です。犬でNPHを使用する根拠は食事を一気に食べることであり、猫でグラルギンを使用するのはダラダラと遊び食いするからです。
NPHインスリンは中間型インスリンと言われ、2〜6時間ぐらいで効果のピークがあり、8〜10時間までかけてインスリンの効果が低下していきます。これに対してグラルギンは持効型のインスリンとして、比較的一定した効果が10〜12時間持続します。つまり食事の摂り方に併せたインスリンということになるわけです。
ですから、遊び食いの犬、一気食いの猫では前述のインスリンが合わないことがあります。実際に犬でグラルギンやデテミルを使用したり、猫でNPHを使用することがあります。このため、血糖コントロール開始前には生活環境や食性をしっかりと伺うようにしています。

最近本邦で初めて動物用インスリン!!
ついに!猫用インスリンとしてプロジンク○R(ベーリンガーインゲルハイム)が発売されました。とうとう動物の糖尿病にもスポットが当たり、インスリンが発売されたことに感涙を覚えています。このインスリンは遺伝子組み換えヒトPZIインスリンという製品で、インスリンとしては1つ前の世代のインスリンということになりますが、注目すべきは1mlが40単位といわゆる“薄い”インスリンということで細かい調整がしやすいということです。早速、当院もラインナップしなければと考えています。今後も動物用インスリンのバラエティーが広がることを期待しています。












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