糖尿病講座7 : 猫の糖尿病は膵炎から

糖尿病はインスリンが欠乏もしくは効かなくなることで起きる病気です。
このインスリンは膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞から分泌されます。ですから膵臓自体に何らかのダメージが加わった場合糖尿病になってしまう可能性があり、その主な原因の一つに膵炎があります。
この膵炎を発症する原因にはいくつかありますが、多くの場合十二指腸の炎症から併発します。
十二指腸とは胃の出口(幽門)から小腸につながるヒトでは25センチ位の腸を指し(十二本指を横に並べた長さと言われるが実際はもっと長い。実は誤訳らしい) 、ここに膵臓からの消化酵素が分泌される主膵管と副膵管、そして肝臓の胆嚢から胆汁を分泌する総胆管が主膵管と同じ位置に開口しています。
ですから十二指腸が炎症を起こしますと、膵管を通して炎症が膵臓に波及して膵炎を併発することがあります。
この十二指腸炎→膵炎→糖尿病という病態を起こしやすいのは犬よりも猫がとても多く、糖尿病と診断した猫の半分以上は膵炎からの併発症のようです。(これは、猫の膵管が犬やヒトと違い一本(主膵管)しかないという構造上の理由も考えられます。)

犬の糖尿病と違い猫の糖尿病は病態が複雑で、治療も難しいのですが、その原因の一つが“膵炎の存在”にあります。
猫の膵炎は食欲不振だけで、ヒトや犬でみられる嘔吐、下痢、腹痛が見られないことがよくあります。
また、血液検査でも膵炎を診断することは難しく、未だに確定診断はおなかを開けて直接膵臓を調べるしかないといわれています。
ですから糖尿病と診断し、少しでも膵炎を疑うような症状があれば糖尿病の治療と並行して膵炎の治療を開始し、その反応を見ながら診断(治療的診断)をするようにしています。
そしてこのタイプの糖尿病は膵炎が直ることによって徐々に血糖値が正常化することが多く、インスリン注射を行っていてもいずれ離脱することが出来ます。
しかし、今まで経験した猫の膵炎は必ず再発していますので、直っても継続した治療が必要となります。