糖尿病講座10 : 理想は強化インスリン療法!

第1世代から第3世代へと続いてきたインスリン製剤の進化の原動力は、「正常人の正常なインスリン分泌パターンを再現したい。」という治療理念にあります。
この正常なインスリン分泌パターンの再現を目指したインスリン療法を “強化インスリン療法”と言います。
そして第3世代のインスリンアナログ製剤の開発により、より理想的なインスリンの分泌パターンに近づいたと言えますが、これからも開発が行われていくことでしょう(いずれはインスリン産生細胞そのものを移植する時代となるのでは・・・)。

正常なヒトや動物におけるインスリンの分泌パターンは下の図に示したように2つの分泌相で構成されています。
つまり、正常の血糖値を維持するために一日中一定の割合で少しずつ分泌される『基礎分泌(ベーサル)』と食事による血糖値の上昇分に対応する分泌の『追加分泌(ボーラス)』というものです。
それぞれの分泌相は、本来であれば膵臓のランゲルハンス島β細胞が血糖を感知しながらリアルタイムでインスリンを分泌して対応しています。
しかし、糖尿病では、この2つの分泌相を2種類のインスリンを組み合わせることによって再現します。
『基本分泌(ベーサル)』用のインスリン製剤は、出来るだけ一定した効果が長時間得られるようになっています。
さらにランタス(インスリングラルギン)やレベミル(デテミル)など第3世代のインスリンアナログ製剤では効果のピークも出ないように作られています。
『追加分泌(ボーラス)』用のインスリン製剤は、注射後速やかに効果を発揮し、しかも短時間で効果がなくなるようになっています。
さらに食前30分前に注射する速効型ヒトインスリン製剤のノボリンRと比較して、超速効型インスリンアナログ製剤のノボラピッド(アスパルト)は食直前の注射と作用の発現が非常に早くなるように作られています。

正常な人のインスリン分泌