甲状腺機能低下症はどんな病気?
甲状腺機能低下症は副腎皮質機能亢進症に次いで多い犬の代表的な内分泌疾患であり、多くは8歳以上の中〜高年齢で発症しますが、若齢でも発症することがあります。甲状腺機能低下症はヒトの橋本病に似た病態となり、甲状腺は萎縮してホルモン分泌が低下します。
甲状腺機能低下症の症状は特定のものはなく、「老化現象」として捉えられていることが多いため、治療を行われず放置されてしまうこともあります。
甲状腺機能低下症はどんな犬種に多いの?
グレートデーン、コッカースパニエル、ダックスフント、アイリッシュ・セター、シェトランドシープドッグ、エアデール、ボクサー、ミニチュア・シュナウザー、プードル、ポメラニアン、ゴールデン・レトリバー、ドーベルマン・ピンシャー、柴犬となり、小型犬から大型犬までほとんどの犬種にわたります。
甲状腺機能低下症はどんな症状がでるの?

甲状腺ホルモンはほぼ全身の臓器に作用するため、症状も全身的にあらわれます。しかし、全てが必ず出るわけではなく、しかも徐々に現れることと、老齢にともなう変化(老化現象)とも似ていることから、わからずに見過ごされてしまうことがあります。表に甲状腺機能低下症の症状を示しましたが、主なものとしては、元気消失・運動不耐、低体温・温かいところを好む、体重増加、便秘、脱毛(特に尾部の脱毛をラットテールとよぶ)・皮膚肥厚、そのほかに悲劇的顔貌とよばれる顔面のむくみ(粘液水腫)などがあります。それほど食べていないのに太ってくることで気づかれることもあります。
甲状腺機能低下症はどの器官が悪くなるの?
甲状腺は喉頭(喉笛)のすぐ下にある左右一対の器官で、片側の大きさはおよそ長さ16〜24mm×高さ3〜6mm×幅3〜6mmとなっています。甲状腺は甲状腺ホルモンを分泌しますが、その合成にはヨウ素(I)を必要とすること。濾胞(ろほう)とよばれるホルモンの貯蔵庫があること。というユニークな特徴があります。
この甲状腺ホルモンの分泌が低下することで甲状腺機能低下症を発症します。
甲状腺機能低下症はどんな原因で発症するの?
甲状腺機能低下症の原因にはリンパ球性甲状腺炎と特発性甲状腺萎縮の2つがあります。リンパ球性甲状腺炎は若齢から中年齢に多くみられ、自分の免疫が甲状腺を攻撃してしまう、自己免疫疾患から炎症を引き起こします。特発性甲状腺萎縮は中年齢から高年齢にみられますが、発症の要因はまだはっきりと分かっていません。
いずれの原因でも診断時に甲状腺は重度に萎縮しています。
甲状腺機能低下症はどうやって診断するの?
上述の症状から甲状腺機能低下症を疑うことにより、血液検査、内分泌検査、画像検査を行って診断を行います。
血液検査では高脂血症(おもにコレステロールの上昇)も甲状腺機能低下症を疑うきっかけとなり、甲状腺機能低下症の7〜8割で認められます。しかし、高脂血症は特発性(家族性)、胆嚢疾患でもみられますので鑑別が必要となります。
内分泌検査では甲状腺ホルモンのT4(総分泌量)、fT4(遊離型)と甲状腺刺激ホルモンのTSHを測定することができ、甲状腺機能低下症ではT4、fT4は低下し、TSHは上昇します。ただし、以下の点で診断の際には注意する必要があります。
- クッシング症候群、糖尿病、腎不全など他の疾患などでも甲状腺ホルモン(特にT4)は低下することがあるため(これらを総称してEuthyroid Sick Syndrome : ESSとよびます)、これらの疾患などの存在を判定する必要があります。
- TSHは甲状腺機能低下症の発症により上昇(負のフィードバック機構の働きによる)しますが、時間が経過すると正常範囲まで低下してしまうことがあります。
以上から測定の際には2つ以上の項目(T4+TSH あるいはfT4 +TSH)を測定して診断の精度を上げるようにします。
甲状腺機能低下症の治療はどうやってするの?
甲状腺ホルモン製剤のレボチロキシンを内服することによる内科的治療が主体となります。服用量は個人差があり、多量になると高血圧症などの副作用を引き起こすため、定期的に甲状腺ホルモンの測定を行い調整する必要があります。
元気消失・運動不耐、低体温などの症状は1〜2週間で、脱毛などの皮膚症状は2〜4ヶ月でそれぞれ回復がみられます。
さいごに
甲状腺機能低下症は見過ごされることが多い疾患のため、中年齢以降では定期的な健康診断などに甲状腺検査を加えることで、診断の機会を増やすことが必要となります。
甲状腺機能低下症の治療は終生の内服薬による内科療法となりますが、多くの症例では元気を取り戻し、発毛もしてくるなど、本来のポテンシャルの高さに驚く飼い主様がたくさんおられます。
アルマ動物病院 糖尿病・内分泌病センターではたくさんの甲状腺機能低下症を診察しておりますので、甲状腺機能低下症の診断を受けたり、疑いがある場合には是非御来院ください。